ぶどう狩り・産地直売・地方発送                                山門ぶどう園便り 2009年7月21日
出水市観光協会推薦     山 門 ぶ ど う 園
  〒 899−0132 鹿児島県出水市下知識町1116番地
  TEL 0996−62−1571    FAX 0996−62−4450
  http://www2.synapse.ne.jp/roshiroshi/   「山門ぶどう園」と入力して検索できます。
    ○ 巨峰              ・・ 7月中旬〜9月
    ○ ロザリオビアンコ(マスカット) ・・ 8月〜11月
    ○ 甲斐路・セキレイ(赤嶺)    ・・ 8月〜12月
 古くからの生産者は、「ロザリオ」と略して呼び、 お客さん達には、「覚え難い、言い難い、口が回らない、舌を噛みそう。」ということで、 「マスカット」、「マスカットみたいなやつ」と呼ばれているロザリオビアンコは、 最近になって名前が知れ渡ってきて、新品種みたいに言われてますけど、 20年以上前、植原1405号とかいう番号で呼ばれてたころから植えてたみたいですから、 生産歴は長いのです。 最初に、ロザリオという名前が付けられましたが、 赤色したロザリオロッソができたことから、 「白」を意味するロザリオビアンコという名前になりました。 名前が変わったからってわけじゃないですけど、 改良された苗木が発売されるたびに植え替えてきました。 同じ品種なんですけど、少しづつ品種改良されてるのか、だんだんと甘くジューシーになってきたように思います。

 上品な甘さが美味しくて、運送にも強くて、優良品種なんですけど、 難点は、完熟した頃というか、甘くなった頃になると、 粒の表面に、ソバカス模様が入ってしまうことです。 改良された苗木では、このソバカス模様は、だんだんと少なくなってきましたが、 ロザリオの親のロザキという品種でも見られるもので、 苗木屋さんに言わせると、血統的なものらしくて、 「ソバカス模様が出る前に収穫して下さい。」ということらしいです。 このソバカス模様が表れなければ、見た目にも綺麗で、飾り物にも良いんですけど、 完熟時期になると、そばかす模様の入らないロザリオよりも、 少々ソバカス模様が入ったロザリオの方が、 甘みが濃いものがあったりするものですから、困ったもんです。
 このソバカス模様ができてしまうのは、 高温、多湿、風通しの悪さが影響するんじゃないだろうか、という説があります。 他にも、植え場所によって出来が変わってくることもあるだろうってことで、 ビニールハウスの中の間伐木を掘り出したときに、 ぶどう園の一番北側の端っこ、昨年まで瀬戸ジャイアンツを植えてた場所に、3本、移植してみました。 50房くらいは生らせましたから、 ソバカス模様ができるかどうかなど、結果が見れると思います。
 風通しの良し悪しで出来が違うってことであれば、 テラスの下に植えるのが一番良さそうに思えるんですけど、 最初にロザリオの苗木が手に入ったときに、テラスの下に植えたのが、 どうにもこうにも良くなかったらしくて、 今は、テラスの下はセキレイが占領してます。 苗木も改良されてきてますから、最新のロザリオなら、テラスの下でも大丈夫かもしれないんですけど、 ロザリオとセキレイでは、新芽が出る時期、花が咲く時期が全く違ってるものですから、 同じ畑に植えて管理するのは難しいので、 テラスの下に植えるのは、実績があって、お歳暮に楽しみにしてらっしゃるお客さんの多いセキレイだけにしてます。

 巨峰と比べると、春の新芽が出てくる時期が遅いです。 花が咲いて実になる時期も、収穫時期も、遅くなってしまいます。 巨峰と同じ普通のビニールハウスでは、お盆までに甘くならないこともありますから、 ビニールハウスの内側に、もう一枚ビニールをはって、二重ハウスにして、朝晩開け閉めして、 2月、3月の夜の温度が下がらないようにして、早く新芽を出させて、 お盆前にも美味しいロザリオができるようにしてます。 ボイラーを焚いて、夜の温度をもっと上げてやれば、 もっと早くに新芽が出て、巨峰の収穫開始と同じくらいに、収穫開始を早められるかもしれません。 でも、燃料代が余計にかかってしまいますから、ロザリオの価格に転化しないわけにはいかないですし、 エコとか温暖化防止とか言われてる時代に、いつまで農業の暖房用に石油を使えるか分かりませんから、 二重ハウスで、頑張って朝晩開け閉めして、お盆前の御中元には間に合うようにしてます。
 左側の写真は、花が咲き終わったときで、右側の写真は、粒間引きが終わって収穫直前くらいです。 随分と粒数が違います。 あまりに多すぎて数えたことはないんですけど、 花が咲き終わったときには、大きい房では、150粒くらいはあると思います。 それを、40粒〜60粒くらいを理想に考えて、 まずは、種の入ってない小粒や、傷ついてる粒を、全部間引きます。 他の粒を一緒に切り落としたり、傷つけたりしないように、一粒一粒丁寧に間引きます。 そして、形が悪かったりする粒も間引きます。 ある程度間引いてしまうと、同じような粒ばかり残って、どれを間引きようもないもんですから、 房型を整えるように、まとまってたくさんの粒がついてるとこから間引いて、 なんとか粒数を減らしていきます。 手伝いさん達に一番人気のない仕事です。
 間引きそこなって粒数が多すぎたり、粒が大きくなりすぎたりすると、 1kgを超える房になることもあって、お客さんに喜ばれたりもしますが、 そんな大房ばかりをたくさん生らせてると、美味しくなってくる時期が遅くなって、 お盆前の御中元に間に合わなくなってしまいますから、 頑張って適度な粒数になるように粒間引きしてます。
 右側の写真の頃に視察に来られた他のぶどう農家さん達は、 かなりの時間かけて、見たり触ったり、興味津々の様子で、花房の切り方など、いろいろと聞いて行かれます。 でも、ロザリオの粒間引きをしてるときにも、視察に来られたことがありますが、 「今日は、この人数で、こっからここまで間引きました。」と教えますと、 あまりの手間と時間のかかり方に、かなり驚かれて、その後の質問は少なくなってしまいました。 たぶん、花が咲く前の花房切りをしてるときに視察に来られて、 1房あたりの手数の多さを見られたとしても、 同じような反応だろうと思います。

 この他にも、生産者を悩ませるのは、新芽が出始めてから、必要な芽数が揃うまでの日数が長いこと、 太く強い枝と細く弱い枝の差が大きいこと、 新芽が出てきても花芽が付いてないときもあること、 花が咲いて実になったときには、たくさんの粒がついた、大房になったって喜んでいても、 種の入ってない丸っこい粒ばかりで、粒が大きくならないことがあるなど、 なんとも不安定なことです。 よく伸びる勢いの強い枝、太い枝には、 上手いことすれば、粒の多い大きな房が生って、粒も大きくなりますが、 何かが上手いこといかないと、種の入ってない粒ばかりになってしまって、 枝ごと切り捨ててしまうんですけど、 その条件の違いが、まだよく分からないのです。

 写真に、白袋と青袋が写ってますが、休憩所から見えるとこに下がってるものですから、 お客さんに、「白袋と青袋があるのは、何でですか...?」と訊かれることがあります。 白ぶどうですから、普通は、青い袋をかけて、光が通りにくいようにして、緑色っぽく仕上げるんですけど、 サイズの大きな青袋は売ってないものですから、 大きなサイズの房には、巨峰と同じ白袋を使ってるのです。 白袋をかけた房は、飴色っぽくなってきて、十分に熟してる感じで、甘そうに見えて、 これはこれで良いなあと話してます。
 この飴色っぽくなったのは、かなり甘くなってきてるとは思うんですけど、 日差しの当たり具合によっても違った色に見えるくらいの微妙な違いですし、 巨峰みたいに、粒の色だけで判断することはできないのです。 まずは枝が茶褐色になった房を選んで、 粒の色を見て、甘そうな感じがしたら、一粒味見して、 美味しければ採る、美味しくなければ次を探す、ということを繰り返してます。 ですから、ロザリオ採りの担当さんは、何十房も採らないといけない日には、 すぐにお腹いっぱいになってしまって辛そうですし、 同じ房を何回も味見すると、だんだんと粒が減って房型が小さくなってしまいますから、 できるだけ1回で甘い房に当るように、枝と粒の色を慎重に見てから味見してもらってます。