山門ぶどう園便り 2008年7月20日
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ぶどう狩り・産地直売・地方発送
出水市観光協会推薦
山 門 ぶ ど う 園
〒 899−0132 鹿児島県出水市下知識町1116番地
TEL 0996−62−1571
FAX 0996−62−4450
E-MAIL roshiroshi@po2.synapse.ne.jp
○ 巨峰
・・ 7月中旬〜9月
○ ロザリオビアンコ(マスカット)
・・ 8月〜11月
○ 甲斐路・セキレイ(赤嶺)
・・ 8月〜12月
○ 瀬戸ジャイアンツ(種無し)
・・ 試験生産中
お客さんに、「好きなだけぶどうを食べられて羨ましい。」みたいなことを言われますが、
農家って、そんなにぶどうを食べられるもんじゃあないのです。
収穫が始まる前は、どのくらいの味になったかな〜って、
あっちこっち味見して回りますが、
収穫が順調に進むようになると、ほとんど食べなくなります。
たくさん食べますって農家もあるかもしれませんが、
僕等みたいに、幼い頃から生産と販売の苦労を見て育つと、
食べ物じゃなくて売り物として見てしまっているんだろうと思います。
「少しでも売って、お金に、生活費にしなくては!。」って根性ですから、
もったいなくて自分では食べることができないのです。
テレビ番組で、漁師さんとこで、獲りたての鯛など、
「いつも食べてます。」みたいな雰囲気で、高級魚を食べるシーンを見たりすると、
いつも食べれていいなあって思ったりもしますが、
僕が知ってる遊漁船の船長さんは、
鯛を食べるのは、お客さんが釣ったのを一緒に食べるときだけだし、
息子さんは魚を全く食べないって言ってましたし、
正月に家に行ったときには、正月料理としてスーパーの刺身盛が並んでたりしました。
僕らが巨峰をあんまり食べないのと同じなのかなって思いました。
そんな僕でも、ロザリオビアンコとセキレイは、
大人になってから植えられた品種ですから、売り物って感覚が薄いのか、
けっこうおやつとして食べてます。
お盆に帰省してきた甥っ子達も、同じような症状で、巨峰は食べないんですけど、
色着き始めたセキレイは、喜んで食べてくれます。
そんなセキレイは、最初は、駐車場と休憩所を木陰にするために、テラスの下に植えられました。
夏には、みなさん目にされますから、「これは何...?、いつ収穫...?。」って訊かれて、
「セキレイという品種で、11月、12月ころに収穫します。」って答えると、びっくりされるんですけど、
色着いて収穫できるようになるのは、
巨峰の収穫が終わって、お客さんが来られなくなってからなものですから、
ほとんど忘れられて、買いに来られる方は、毎年同じ方達ばかりでした。
木の本数も少なくて、収穫量も少なかったですから、
残れば、お手伝いさん達や、看板を立てさせてもらってるとことなど、
お世話になってるとこに、ちょっと早めの我が家のお歳暮として配ってました。
20年くらい前に植えたセキレイは、果袋したままでは色が着かなかったので、
そろそろ収穫しようかって房数だけ果袋をはいで、着色させて、収穫して、
着色した房が残り少なくなってきたら、また果袋をはいで、って繰り返してました。
山に食べ物が無い冬には目立つみたいで、鳥に狙われやすかったんです。
若木に植え替えてからは、同じ品種の苗木でも、品種改良されてきてるみたいで、
果袋の中でも着色するようになりましたし、甘味も強くなりました。
今では、ほとんど果袋したままで、
撮影用や、お客さん達の見物用に、何個か果袋をとる程度です。
それでも、袋の底を大きく開けてると、ヒヨドリがやってきて、
羽をパタパタさせながら、ヘリコプターのホバーリングみたいに空中に静止して、
袋の下からクチバシ突っ込んで食べてくれます。
感心するくらいに器用です。
夏のお客さんには、休憩所の上を見上げて、「たくさん生ってるねえ。」って言われます。
実際、あんまり早く色着いてしまっても、珍しさがありませんし、
完全に色着いてしまうと病気になりやすい品種ですから、
あんまり早く色着かないように、房数を多めに生らせてあります。
それに、病気にも薬にも弱い品種ですから、
収穫までには何割かはダメになってしまう計算で、あらかじめ多めに生らせてあるのです。
でも、木の体力以上に、あまりにたくさん生らせたままでは、
寒くなって葉っぱの色が変わり始めると、粒が軟くなってダメになってしまいます。
そうならないように、葉っぱの色が変わり始める頃には、
ダメになった房や小房を採ったり、だんだんと木の負担を減らすようにして、
12月末まで木に生らせたままにできるようにしてます。
冬になって、赤や黄色に紅葉した葉っぱは、とっても綺麗ですし、
「山に紅葉を見に行くよりも綺麗」って、お客さんに喜ばれますし、
冬のぶどう園って気分も出て、印象に残るみたいですけど、
僕らにとっては、緑色のままの方が、美味しい状態で遅い時期まで実を生らせておけますから、
「もちょっとの間、緑色の葉っぱでいてほしい。」そんな思いなのです。
ロザリオビアンコとセキレイは、ビニールをはりっぱなしにしてても美味しくなるものですから、
夏の台風時期には、ビニールで雨風から守って、
台風シーズンが終わってから収穫することで、
ちょこっとは台風が家計に与える影響を小さくできるんじゃないかってことで、
分園にトンネルハウスを作ったときに、巨峰の木を引っこ抜いて、
代わりにセキレイとロザリオビアンコを植えて、
さらに、分園のテラスの休憩所を増やしたときにもセキレイを植えて、
冬のぶどうの面積比率を増やしてきました。
12月まで収穫が続くと、雪が降る日に収穫することもあります。
遠くの山も、田圃も、畑も、雪が積もってる中を、畑にセキレイを採りに行くのです。
テラスやビニールハウスのおかげで、
セキレイに雪が降り積もるってことはないんですけど、
外の雪が音を吸収するので、いつものビニールハウスの中なのに、
異様に音が響くような気がして、変な感じです。
もっとも、雪が降るときに、ぶどうの収穫をすること自体、変な感じなんですけど...。
上着もズボンも、着れるだけ着込んでますから、
体全体で寒さを感じることはないんですけど、
採ってきたセキレイを、小屋で、選別や、箱詰めや、袋入れやらするものですから、
手袋してるわけにはいかなくて、手がかじかんでしまいます。
買いに来られて待ってらっしゃるお客さん達も、
寒さを忘れようと喋りっぱなしだったり、足踏みされてたり、
ひじょーに寒そうです。
いっそのこと、小屋を閉めきって、
ストーブでも点けとこうかしら...とも思いますけど、
小屋を建てるときには、
真冬にぶどうの選別をやるってことを想定してなかったらしくて、
小屋を閉めきるのはシャッターだけなのです。
シャッターが閉まってると、営業終了と思われて、
お客さんも入ってこられないでしょうから、閉めるわけにはいきませんし、
困ったもんです。
最近は、お歳暮に、クリスマスプレゼントに、お正月の挨拶回りにと、
かなり遅い時期まで、セキレイが残ってたものですから、
収穫が終わって、成人の日を過ぎても、「注文お願いします。」って電話があったりします。
世間の常識としても、生産者の常識としても、
ふつうにぶどうの生ってる時期ではないと思いますが、
セキレイを買い慣れた方々にとっては、冬にもぶどうが生ってるということが当たり前になりつつあるようです。
珍しい冬のぶどうのおかげで、お菓子屋さん、ミカン屋さん、農産物販売所の方々など、
他の業種の方とも知り合う機会ができましたし、
遠方からツル観光に来られたお客さん、雑誌を見て来られたお客さん、
新しい出会いが増えたな〜って感じてます。